パウエル 14K Gold の歌口が突然外れてしまった
ということで
修理の依頼がありました
ハンダの状態を見る限りでは、製作時のハンダ付け不良のように思われます
全体にハンダの量が少なくまわっていない部分があります
フラックスの濡れ不足とハンダ付け温度が高かったようで
金属間化合物 AuSn4 が形成されている様に見えます
後からハンダの処理をした際に
鉛は残っていなかったので PbSn ハンダではないようですが
ライザー側には銀が残っていたので
AgSn ハンダかもしれません
※金のハンダ付けには AuSn ハンダが相応しいのですが
高温になることもあり修理では PbSn ハンダを使います
(更に低い温度の InPb ハンダもあります)
AgSn ハンダは金との相性は良くありません
残ったハンダを綺麗に剥がしてから
↓ 元の位置に合わせて固定(カラゲ)します ↓(カラゲ線)
この様に鏡を入れて目で確認すると共に
細く尖らせた針の先端でライザー面から管に向かって触れ
前後左右に段差のないことを確認します
位置が決まればフラックスをまわして
バーナーで炙ってハンダをさすだけなのですが・・
製作時は管の上に乗ったライザーとの境目に
上からハンダをさせば良いのですが
修理の場合はライザーの外周からハンダをささなければなりません
しかも
この歌口は接合面の面積が小さく
リッププレートの下の奥まったところに
ハンダをささなければなりません
苦戦したものの
なんとか元の位置にハンダ付けすることができました
殆ど元の形に触ることなく
磨いて仕上げた程度です
ついでに
管の上部に一周してあった歪も
目立たないように修理しました
この頭部管は以前にご相談を受けていたこともあり
音の状態を把握していたのでお引き受けしました
いきなり「元通りの状態になるように付け直して・・」と言われても
剥がれる前の状態を知らなければお引き受けできない場合があります
たとえ寸分違わず付け直すことができたとしても
熱を加えた上にハンダの処理をして磨き直しをするのですから
100%変わらないという保証はできません
仕上がりの確認で何か問題を感じたとしても
それが修理に因るものなのか元々なのか判断できません
修理した上で問題の無い状態に調整することまでをお任せいただけるのであれば
このような修理もお引き受けいたします。